タトゥーの色褪せ、修正、そして除去について考えたことはありますか?
時間が経つにつれてタトゥーの色が薄くなり、修正や除去を検討したことがある方も多いのではないでしょうか。
タトゥーが一般的になりつつある一方で、それを除去したいと考える人も増えてきています。
しかし、レーザーによるタトゥー除去は決して簡単な施術ではありません。
なぜなら、安全に治療を行い副作用を防ぐためには、タトゥーの色素に適した波長を選ぶ必要があり、
高品質なレーザー機器を使用しなければならないからです。そのため、すべての皮膚科が適切な機器を完備しているとは限りません。
また、タトゥーに使用された色素や深さによって、使用するレーザー機器も異なるため、不適切な波長やエネルギーを選択すると、効果が不十分であるだけでなく、瘢痕(はんこん)などの副作用が発生するリスクもあります。
そこで今回は、タトゥーの色素ごとに適したレーザー波長の選び方と、副作用が発生する理由および予防法について詳しく解説していきます。
1. タトゥー除去に適したレーザーの選択
ピコシュア、ピコプラス、ピコウェイ
タトゥー除去のための代表的な高価なピコレーザー機器には、「ピコシュア」「ピコプラス」「ピコウェイ」があります。
タトゥー除去で最も重要なのは「照射時間」です。
照射時間が短いほどタトゥーの色素粒子を効率的に破壊できるため、より安全で副作用のリスクも最小限に抑えることができます。
従来のナノ秒レーザー(Qスイッチレーザー)は比較的安価で、多くの皮膚科で現在も使用されています。
しかし、タトゥー除去には可能な限りピコ秒単位のレーザーを使用するのが理想的です。
2. 複数の色が混ざったタトゥーには、最低2種類以上の波長が必要
単色のタトゥー(例:レタリングなど)であれば、1つの波長で比較的簡単に除去できます。
しかし、例えば「イレズミ」のような多色タトゥーは、異なる色素が異なる深さに沈着しているため、1つの波長だけでは完全に除去できません。
むしろ、副作用が発生するリスクが高まるため、最低でも2種類以上の波長を組み合わせる必要があります。
3. 色素ごとの適切なレーザー波長
タトゥーの色素 | 適したレーザー波長 |
---|---|
黒色 | 694nm, 755nm, 1064nm |
緑色 | 694nm, 755nm |
青色 | 694nm, 755nm, 1064nm |
赤色 | 532nm |
オレンジ色 | 532nm |
黄色 | 532nm |
紫色 | 694nm, 755nm |
白色/肌色 | 10600nm |
使用される代表的なレーザー機器:
- 532nm = KTP or Nd:YAG half laser
- 694nm = ルビーレーザー
- 755nm = アレキサンドライトレーザー
- 1064nm = Nd:YAGレーザー
- 10600nm = CO₂レーザー
上記の表のように、タトゥーの色素ごとに適したレーザー波長は異なります。
そのため、多色タトゥーを除去する際には、532nm・694nm・755nm・1064nm などの複数の波長を組み合わせて使用するのが一般的です。
特に赤色や黄色系の色素は、完全に除去するのが難しい傾向にあります。
Scat tissue covered tattoo
また、白色や肌色(ヌード・ホワイト・タン)の色素は、メラニン色素が含まれていないため、通常の色素レーザーには反応しません。そのため、
10600nmのCO₂レーザーやエルビウムレーザーを使用する必要があります。
4. タトゥー除去の副作用とは?
(1) 色抜け(部分的な色素残留)
下の写真を見ると、タトゥーが消えていくように見えますが、実際には複数の色素が混ざっているタトゥーに対して、1種類の波長しか使用しなかったため、部分的にしか色が消えなかった状態です。
このように色が抜けてしまうと、残った色素が少なくなり、除去がさらに難しくなる可能性があります。そのため、最初から適切な波長を選択することが重要です。
(2) 瘢痕(傷跡)
以下の写真は、過剰なエネルギーを使用したために発生した副作用です。
レーザーは色素を破壊し、炎症反応を引き起こすことでタトゥーを除去します。
しかし、過度なエネルギーで照射すると炎症が悪化し、爆発的なダメージによって瘢痕が形成されるリスクがあります。
特に、ピコレーザーではなくナノ秒レーザーを使用すると、望まない損傷が発生する可能性があるため、できるだけピコレーザーを使用することが安全な治療方法とされています。
まとめ
- タトゥーの色素ごとに適した波長を選択することが重要。
- 多色タトゥーは最低2種類以上の波長を組み合わせる必要がある。
- ピコ秒レーザーを使用すると、安全性が高まり副作用のリスクを抑えられる。
- 適切なエネルギー設定を守らないと、色素残留や瘢痕のリスクがある。
タトゥー除去は、単純な治療ではありません。
適切な機器と経験のある医師のもとで、安全に施術を受けることをおすすめします。